(株)秀建 編集部
2025.9.2
ホテルブランディングで差をつける!実践すべき取り組みと成功事例を解説
数多くの宿泊施設があるなか、「お客様に自社のホテルを選んでもらうためにはどうすればいいのか」と、悩んでいる担当者の方も多いのではないでしょうか。
競合他社とは違う自社の強みがあっても、お客様に伝わらなければ集客にはつながりません。
選ばれるホテルになるためには、ブランディングが重要です。
そこで本記事では、ホテルブランディングについて欠かせない取り組みや成功させるポイントなどを解説します。
このコラムでわかること
●ホテルブランディングは、競合との差別化や売上安定化、インバウンド対策に効果的です。
●ブランディングを成功させるには、ターゲット設定やコンセプト策定に加え、定期的な効果検証が重要です。
●ブランドイメージを視覚化し形にするには、ホテルブランディングに強いデザインパートナーや施工会社の選定が不可欠です。
そもそもホテルブランディングとは?
ホテルブランディングとは、競合他社との差別化を図り、ホテルに対して特定のイメージを定着させることを指します。
ただ、ブランディングはやみくもに行うのではなく、まず方向性を決めてから実施することが重要です。
たとえば、「海に沈む夕日を見ながら露天風呂に入れる」「楽しめる海のアクティビティが豊富」「伝統工芸の体験ができる」など、自社のホテルならではの強みをイメージに取り込む必要があります。
ブランディングにはさまざまな手法がありますが、設定したイメージに合わせた内装にすることも取り組みの一例です。
選ばれるホテルになるためにはブランディングが重要!
選ばれるホテルになるためには、「○○といえばこのホテル」のように、特定の条件で思い浮かぶようにブランディングを実施する必要があります。
ホテルブランディングが重要な理由は主に3つです。
- ブランドイメージを構築して競合他社との差別化を図る
- 売上の向上および安定化に直結する
- インバウンド対策になる
それぞれの理由を以下でさらに掘り下げて解説します。
理由①ブランドイメージを構築して競合他社との差別化を図る
ブランドイメージを構築することで独自性を出し、競合他社との差別化が図れるのが理由の一つです。
競合他社との違いをはっきり押し出せていなければ、多数の宿泊施設のなかに埋もれてしまい、なかなかお客様から選ばれません。
たとえば、地元アーティストの伝統工芸品を随所に配置し、お客様に地域の文化を感じてもらう内装にするのも効果的です。
テーマ性のある内装で特別な体験を提供できれば、他社との差別化につながります。
理由②売上の向上および安定化に直結する
ブランドイメージを定着させられると、ホテルの魅力もアピールしやすくなります。
そこでしか味わえない体験を求め、ホテルに宿泊することそのものを目的とするファンやリピーターもでてくるでしょう。
「日ごろの疲れを癒やしながらゆっくりくつろぎたい」というお客様のニーズに対しては、色調をアースカラーで統一し、自然素材を取り入れた内装デザインにするのも効果的です。
ブランディングが成功し、実際に宿泊してくれたお客様のポジティブな評価が広がれば、新規の顧客開拓にもつながり、売上の向上や長期的な集客の安定化も期待できます。
理由③インバウンド対策になる
海外からの旅行者を惹きつけるためにも、ブランディングは重要です。
コロナ禍で一旦は海外からの旅行者は減少したものの、政府もインバウンドの回復に向けて集中的な取り組みを行っています。
たとえば、観光庁では2022年に「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりに向けたアクションプラン」を作成し、すでに地方への誘客も見据えていました。
2025年6月30日に観光庁が発表した「インバウンド消費動向調査 2025年1-3月期の調査結果(2次速報)」によると、2025年1~3月期の訪日外国人旅行消費額は2兆2,803億円です。
これは、前年同期に比べ、28.8%増になっています。
それだけ増加している海外からの旅行者を取り込むためにも、自社のホテルについて特定のイメージを定着させておくことが重要です。
ブランディングが成功し、SNSや旅行サイトなどを通じて良い口コミが拡散されれば、旅行計画中の潜在顧客に自社のホテルを知ってもらうきっかけになり、インバウンド需要にもつながります。
ホテルの魅力を形づくる3つのブランディング視点
ホテルブランディングを考えるうえで、意識しておくべき要素が3つあります。
- ストアブランディング
- エンターテイメントブランディング
- プロダクトブランディング
それぞれの要素について、以下の段落で詳しく解説します。
ストアブランディング
ストアブランディングとは、ブランディングに基づいたビジュアルイメージの形成です。
具体的には、設定したコンセプトを基に方向性を決め、外装や内装、客室のインテリアなどに一体感を持たせて整備します。
また、SNSを活用してお客様とつながれるようにコミュニティづくりを行うのも、ストアブランディングの一つです。
エンターテイメントブランディング
エンターテイメントブランディングは、お客様に楽しんでもらえるような独自の取り組みを行うことです。
たとえば、ワークショップやカルチャープログラム、アクティビティの実施、音楽イベントの開催など、そこでしかできない自社オリジナルの体験を提供することで差別化を図ります。
プロダクトブランディング
プロダクトブランディングは、ホテルで扱うグッズによってホテルの価値を作り出す取り組みです。
たとえば、ホテルオリジナルのアメニティグッズを製作し、持ち帰ることができるようにするのもいいでしょう。
持ち帰ったグッズを旅行の思い出として保管してくれたり、家で使ってくれたりするうちに「また訪れたい」と思うきっかけにつながります。
ホテルを思い出してもらうためにも、グッズはホテルのイメージに合うものにすることが重要です。
ホテルブランディングに欠かせない5つの取り組み
ホテルブランディングの取り組みは、以下の5つです。
- 自社および他社の分析
- ターゲット顧客の明確化
- コンセプトの設定
- ブランディングの立案
- 定期的な効果の検証
5つの取り組みについて、順を追って解説します。
自社および他社の分析
ブランディングでは自社の強みや魅力を見つけ、競合他社との差別化を図らなければなりません。
そのためにも、まずは自社の強みや現状を客観的に把握することが重要です。
「地元の食材を使った料理が自慢」「露天風呂付き客室で海に沈む夕日を眺めながら入浴できる」など、強みとして浮かび上がった内容は、他社と差別化できるポイントとしてブランディングでも活用できます。
同じように競合他社についても分析を行い、自社と比較する必要があります。
ターゲット顧客の明確化
ホテルのブランディングでは、自社のホテルをどのようなお客様に利用してほしいのか、ターゲットをイメージしておく必要もあります。
ターゲットのイメージは漠然としたものではなく、年齢層や家族構成、職業や年収などを具体的に設定したペルソナを考えておくことが大事です。
たとえば、ファミリーに利用してもらいたいのに、家族で楽しめる要素がないホテルではニーズにマッチしません。
ターゲット層を絞ることで、どのようにブランディングするのかも決めやすくなります。
コンセプトの決定
ホテルの魅力や特徴を活かし、コンセプトを考えます。
まずは、設定したペルソナなら、どのようなホテルを選ぶのかを考えてみてください。
たとえば、アウトドアが好きな3~5歳の子どもがいる30代の夫婦なら、小さな子どもでも楽しめるアクティビティがあると効果的でしょう。
加えて、自然の豊かさをアピールするのもいいかもしれません。
具体的に設定したペルソナに合わせて、コンセプトも細かく設定します。
ブランディングの立案
ターゲット顧客やコンセプトを踏まえ、具体的にブランディングを立案します。
この段階では、コンセプトやブランドイメージを視覚化することが重要です。
ロゴやアイコン、パンフレットや看板、写真・動画などに使う色や文字のフォントなどをコンセプトに沿って設定します。
ホテルの内装や装飾もブランドイメージに合わせることで、お客様にも一貫した印象を与えられます。
定期的な効果の検証
ブランディングは一度実施したらそれで終わりではなく、効果を上げているかどうか、定期的に検証する必要があります。
万一、反響が良くないようなら課題となる点を見つけ、解消できる方法を探してみましょう。
たとえば、展示されているアート作品や伝統工芸品を鑑賞するだけではなく、作品作りを体験できるワークショップを開催するなど、アプローチの仕方を変えることでブランディングの効果が変化する可能性もあります。
ただし、ブランディングによる認知の拡大や企業イメージの定着には時間がかかるため、短期的な効果は見えにくいです。
そのため、短期的な数値や反応で一喜一憂するのではなく、中長期的な視点を持ちながら継続的に成果を測定し、必要に応じて改善していく姿勢が大切です。
ホテルブランディングの事例4選
実際にホテルブランディングを行い、イメージが確立された事例を4つ紹介します。
- 日本の詫び寂びと北欧ヒュッゲを掛け合わせた一棟貸し旅館
- 「創作活動」と「一人旅」を応援する湯河原の温泉旅館
- 日本の原風景の中にある「自分たちだけの空間」
- 廃校をリノベーションした「仲間と泊まる学校」
4つの事例を見ていきましょう。
日本の詫び寂びと北欧ヒュッゲを掛け合わせた一棟貸し旅館
「旅館 iriya」は、2階建ての木造住宅を一棟貸しの宿泊施設に改修した事例です。
既存の障子や梁などを残して日本の侘び寂びの文化を表現しつつ、「居心地の良い空間」を意味する北欧ヒュッゲの要素も掛け合わせた空間を実現しています。
フィットネスルームや個室サウナも備え、サウナや筋トレなどのいつものルーティンを行いながら、贅沢な空間で心身ともにリフレッシュできる旅館になりました。
「創作活動」と「一人旅」を応援する湯河原の温泉旅館
かつては夏目漱石や与謝野晶子などの文豪たちが愛した神奈川県の温泉地、湯河原にある「創作活動」と「一人旅」を応援する温泉旅館です。
「大人の原稿執筆パック」などの「書く」に視点を置いた宿泊パックやクリエイター専用の一人用ルーム、24時間開放のラウンジを備え、ほかで味わえない創作活動と湯治を楽しめる空間になっています。
The Ryokan Tokyo YUGAWARA & おふろcafé HITOMA
日本の原風景の中にある「自分たちだけの空間」
成田空港に近い千葉県の築150年以上の古民家を、宿泊施設として改装した事例です。
観光はもちろんワーケーションでも利用できるように、プロジェクターやホワイトボードが完備した蔵もあります。
かつては豪農一族が暮らしていた古民家が、露天風呂から田園風景を一望できる一棟貸しのプライベート空間に生まれ変わりました。
廃校をリノベーションした「仲間と泊まる学校」
廃校になった小学校を利用し、84名まで宿泊できる団体宿泊施設としてリノベーションしました。
体育館の卓球セットや飛び箱、音楽室のグランドピアノ、中庭のBBQ台や焚き火台など、貸し出し可能な設備・備品が多く、さまざまな使い方が可能です。
宿泊棟のほかに図書室やカフェを備えた地域交流棟があり、地域住民の憩いの場としても活用されています。
ホテルブランディングを成功させるポイント
ホテルブランディングを成功させるためのコツは、大きく分けて4つです。
- 従業員への浸透を図る
- 空間・体験・コンセプトに独自性を意識する
- ホテル全般に統一感を持たせる
- ブランディングを支えるデザインパートナー・施工会社を選ぶ
それぞれのコツを以下で詳しく解説します。
従業員への浸透を図る
ホテルブランディングでは、日ごろから直接お客様と接する従業員も重要な要素の一つです。
ホテルのブランドイメージを崩さないようにするためには、サービスの提供もブランドイメージに合ったものでなければなりません。
そのため、ブランディングはホテルの経営者だけではなく、従業員もブランドを理解する必要があります。
時には意見を聞いたり、アイデアを出してもらったりなど、現場を知る従業員の協力を得るのもブランディングを成功させるポイントになり得ます。
空間・体験・コンセプトに独自性を意識する
自社および他社の分析で自社ホテル独自の強みが明確になったら、それを空間作りやお客様に提供する体験、コンセプトなどに活かしましょう。
その際、独自性を意識することが大事です。
地域と共生できる点をブランディングで掲げているのであれば、インテリアに伝統工芸品を取り入れ、内装にその地域らしさを反映させる方法もあります。
地域の観光スポットと連携してツアーを開催するといった、お客様が地域に触れてもらう体験を組み込むのもいいでしょう。
独自性を出す方法はたくさんありますが、特に注目されているのが滞在自体に価値を与える体験型の設備導入です。
たとえば、リラクゼーションを求めて訪れるお客様のニーズに合う設備の一つとしてサウナが挙げられます。
昨今のリラクゼーションやウェルネスへの高まりから、ホテルにもプライベートな空間づくりや心身のリフレッシュを促す設計が重要視されるようになりました。
実はサウナは、ホテルや旅館などの宿泊施設に向いている設備です。
共用スペースに大規模なサウナを設置することで、日帰り利用のお客様にもアプローチできます。
また、サウナ付きの部屋を設けることも可能です。
サウナ付きの部屋をオプションにすれば既存のお客様を逃すことなく、サウナ好きの新たな客層も取り込みやすくなるでしょう。
新しい顧客体験を提供しているホテル事例
「ここでしか味わえない」体験を提供し、独自性を演出している事例が以下の2つです。
- 岩盤浴で新たな顧客体験を提供したホテル事例
- 千葉ロッテマリーンズを体感できるホテル事例
それぞれの事例を紹介します。
岩盤浴で新たな顧客体験を提供したホテル事例
「伊良湖オーシャンリゾート」が新たに岩盤浴を導入した事例です。
もともと目の前に伊良湖岬の絶景が広がる露天風呂やサウナなどがあり、温泉施設は充実していましたが、新たに岩盤浴を2つ設けました。
1つはパワーストーンの「薬宝黄玉石」を使った寝式の岩盤浴、もう1つは「甲翠石」を使用し、洞窟をイメージした空間の座式岩盤浴です。
座式タイプの岩盤浴ではリラックス効果や代謝機能の促進が期待できる香温浴ができるほか、壁面・天井面に水紋がひろがる仕掛けが施され、五感で楽しめる空間になりました。
千葉ロッテマリーンズを体感できるホテル事例
「ロッテシティホテル錦糸町」に「千葉ロッテマリーンズ」のコンセプトルームを誕生させた事例です。
実際に宿泊したサポーターのお客様から、「スタジアムの興奮を蘇らせるような客室がほしい」との要望を受けて実現しました。
室内はチームカラーの黒と白を基調とし、スタジアムを思わせるグリーンのカーペットが敷かれています。
壁面に飾られた選手の写真やユニフォームなども含め、千葉ロッテマリーンズを体感できる空間です。
ホテル全般に統一感を持たせる
ホテルのブランディングでは、外観や内装はもちろん、ロゴや従業員の制服に至るまで、ホテルに関する要素全般に統一感を持たせることが重要です。
たとえば、和モダンをキーワードとしてブランディングをしているホテルの外観や内装が洋風では、統一感がなくチグハグな印象になります。
テーマに沿って統一感を持たせると、お客様に与える印象も一貫し、記憶にも残りやすくなるでしょう。
ホテル全体で統一感を図った事例
ホテル全体でイメージを統一したブランディングを実施している事例が以下の2つです。
- 祇園の趣を活かした空間演出で、“大人の隠れ家”をつくりあげた事例
- 客室から共用部まで統一されたデザインで、快適性を高めた事例
それぞれ詳しく紹介します。
祇園の趣を活かした空間演出で、“大人の隠れ家”をつくりあげた事例
祇園という立地にふさわしく、和の趣が感じられる空間を演出した「ホテル祇園 一琳」の事例です。
ロビー階のサロンには囲炉裏があり、木の温かみが感じられるなど、一歩ホテルに足を踏み入れると街の喧噪を忘れるような空間が広がっています。
照明には柔らかな明かりを用い、ホテル全体を「大人の隠れ家」のような雰囲気につくりあげました。
客室から共用部まで統一されたデザインで、快適性を高めた事例
JR水戸駅直結の「ホテル テラス ザ ガーデン水戸」がリニューアルオープンした事例です。
客室は機能性とデザイン性を兼ね備えつつ、ゆったりサイズのベッドを設置し、快適に利用していただけるように配慮しています。
客室および共用部をナチュラルモダンな雰囲気で統一し、居心地の良い空間づくりで快適性を高めました。
ブランディングを支えるデザインパートナー・施工会社を選ぶ
ホテルのブランド構築には、視覚的な要素が不可欠です。
内装やロゴはもちろん、場所の案内や動線を示すサインをどう設置するのか、サイン計画も含めてブランディングする必要があります。
的確なブランディングを行うためには、コンセプトを汲み取ってデザインに落とし込んでくれるデザインパートナーや、デザインを形にしてくれる施工会社を選ばなければなりません。
「宿泊体験」や「地域の魅力」といったホテルならではのキーワードをデザインで表現できるような、ホテルブランディングに理解のある施工会社に依頼するのが成功への近道です。
ブランディングを意識したホテルの内装工事なら秀建にご相談を
お客様から選ばれるホテルになるためには、ホテルブランディングが重要です。
ホテルブランディングを成功させるためには、自社ホテルおよび競合他社の分析を行い、まずは自社の強みを知る必要があります。
そのうえでターゲットを明確にし、コンセプトを決定してブランディングを立案していきます。
ホテルの空間・体験・コンセプトにおいて独自性を意識しつつ、統一感を持たせるためには、ブランディングを支えるデザインパートナーや施工会社の力を借りることも大事です。
秀建では、コンセプトに基づいた企画や設計から施工、アフターメンテナンスまで対応しています。
ブランディングを意識したホテルの内装工事を検討されているのなら、秀建までご相談ください。